- 特集 2 -
(クライミングをしよう!)
2001/09/09
  0.クライミングをしよう!
  1.ビック・ロックで
  2.クライミング写真室 1
  3.クライミング写真室 2
  4.クライミング写真室 3
  5.クライミング写真室 4
  6.フランスツアーへの誘い

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      プロヴァンス滞在記   − クライミングをしよう! −

6.フランスツアーへの誘い(いざない)

                 
この原稿は、私が所属していた社会人山岳会・稜朋会(りょうほうかい)の、創立40周年の祝賀会(2013.3.17)に向けて刊行された会報・『稜朋7号』へ寄稿したものを転載・写真追加して作成しています。


■はじめに■          
フランスはボルトプロテクションを多用したスポーツクライミングが最も早い時期に確立した国です。
1970年代後半に始まり、80年代に爆発的に進化したそのクライミング・・・しっかりしたプロテクションの中で純粋にクライミングのシークエンス(ムーブの連続性)と困難性を追及するスタイルは、世界中に大きな影響を与えて一気に広まっていきました。
それまでのフリークライミング(=イギリス・アメリカに代表されるスタイル)・・・ナチュラルプロテクションを使ってクラックを、または最小限のボルトを使用してスラブを、グランドアップで登る冒険的要素の強いクライミングは、近年ではスポーツクライミングと区別してトラッドクライミングと呼ばれるようになっています。
また、フランスはアルプスを擁する岩の国であり、世界で最もクライミングに理解のある国と言われています。子供の頃から岩や山に接する機会が多い上に、学校の体育授業やサマーキャンプにクライミングが取り入れられることもあり、国民全体的にクライミングへの理解度が高くて、驚かされることがしばしばあります。岩の数も無尽蔵で、フランスのクライミング雑誌「GRIMPER」の1998夏の特集は、なんと「フランス1000岩場」でした。もちろん現在ではもっと増えています。特にフランス南部は広大な石灰岩台地や石灰岩山地がいくつもあり、ゴルジュや谷が発達して良質のクライミングエリアが集中、世界中のクライマーを魅了しています。

フランスはまさしく、スポーツクライミングの発祥地。
青い空、美しい風景、素晴らしい壁とルート、陽気なクライマーたち、そして、そこで繰り広げられる純粋に楽しく厳しいクライミング・・・そんなフランスでのクライミングは、きっと誰にとっても素晴らしい思い出になることでしょう。

本稿では、フランス・フリークライミングへの誘いとして、簡単なエリア紹介と実用情報、辞書では分かりにくい用語解説をいたします。エリア紹介については、有名エリアだけを紹介しても数十ページに至ってしまうため、日本人にも極めて馴染みのある11エリアに絞って、その近況と併せてご紹介します。最後にはスペイン・カタルーニャでのクライミングも若干ですがご紹介します。



1.Buoux(ビュークス)
フランスのクライミング史を語る上で、絶対に欠かすことの出来ない岩場です。
1980年代、ここで展開されたクライミングの形態はフランスのみならず、全世界に多大な影響を与えました。グランドアップではなくラッペル(懸垂下降)でのルート設定と、ケミカルアンカーに象徴されるしっかりしたボルトプロテクション。その中でムーブの難しさを追求するスタイル。チッピングやグルーイング。ブランクセクションには人工ホールドも厭わないルート開拓・・・(注1)。 それらはまだクラック全盛だった日本にも衝撃的に紹介され、今日の日本のフリークライミングにつながる大きな要素の1つになっています。
90年代までは、まさしく各国からのクライマー達で賑わったビュークスですが、しかし同時に、その時点ですでに新ルートの余地はほとんど無く、流行は次第に他の岩場に移り、残念ながら現在では静かなローカルの岩場として落ち着きつつあります。
とはいえ、T.C.F.(5.11c)や、Reve de Papillon(5.13a)など、極めて素晴らしいルートは健在です。歴史的な意義は最高の岩場ですし、フランスツアーの第一歩としては最適で、お勧め岩場と言えるでしょう。
注1:当時物議を醸した人工ホールドは、その後、撤去されています。
≪メモ≫
・位置:43.821725,5.380586 (←Googleマップで検索)
・近くの都市/アクセス:Avignon(アヴィニヨン)から東へ50km。車で1時間弱。
・ルート高差:20〜30m
・ベストシーズン:11月〜5月。真冬は寒くて辛い。
・宿泊:Buoux村には何も無いが、近隣の村にキャンプ場、ホテル、ジト多数あり。
・トポ:BUOUX (by FFME CDVaucluse ed 2004, Reedition 2007)

2.Cimai(シマイ)
ビュークス、カランクと並んで古くからスポーツクライミングが展開された岩場です。主な開拓は1980年代中盤から。すっぱり切れた美しく大きな前傾壁が特徴的。一時は大変な人気エリアでしたが、南向きで日当たりが良すぎることと、細かいエッジ主体のクライミングが時代に合わないのか、あっという間にすたれてしまい、90年代後半にはあまり噂にも登らなくなってしまった。最近ではローカルクライマー以外が訪れる事はめったにないようです。
≪メモ≫
・位置:43.177491,5.84577(←Googleマップで検索)
・近くの都市/アクセス:Toulon(トゥーロン)から西へ20km。車で30分程度。
・ルート高差:20〜30m
・ベストシーズン:11月〜3月
・宿泊:Toulon近辺にキャンプ場、ホテル、ジト多数あり。
・トポ:Escalades autour de Toulon (Tome 1)(by D.Garnier ed La corditelle 2004)

3.Volx(ヴォルクス)
とても有名な岩場ですが、初めて訪れるとたぶん、世界中に有名なワリには他エリアに比べて規模が小さい事に奇妙な感じがしてしまうと思います。しかし、Volxを有名にしているのは何と言っても、時代に先駆けて前傾壁に開拓された数々の素晴らしいルートです。1990年初頭まで世界中から有名クライマーが集まって熱気に溢れたエリアでしたが、新規開拓の余地は全く無く、Super Plafond(8c+)の開拓以降は目立ったニュースはありません。
強いクライマーには『今更感』が大きくて、今では静かなローカルエリアに落ち着きつつありますが、7a〜8aにかけてとても面白いルートが多くてアプローチも便利、雨の日にも登れることが多いので、近辺でクライミングをする際は、非常に便利な岩場です。
≪メモ≫
・位置:43.881624,5.83698(←Googleマップで検索)
・近くの都市/アクセス:Aix-en-Provevce(エク・サン・プロヴァンス)から北東に50km
・ルート高差:20〜25m
・ベストシーズン:11月〜3月。真冬も快適。
・宿泊:近隣の村にキャンプ場。ジトあり。
・トポ:製本トポなし。村のバーでコピーを買えるが非常に難解。ネット上で情報入手可能。

4.Chateauvert(シャトーベール)
開拓当初(1990年代前半)からシークレットエリアだった。
よくありがちな、地権者との折り合いがつかず黙認のパターンだったのですが、エリアがとても素晴らしいため、あっという間に有名になってしまい、世界中からクライマーが集まる『誰もが知っているシークレットエリア』という不思議な状態が続いていた。その後、完全にオープンになり、今では駐車場も整備されて、とても良い雰囲気・環境になっています。
90年代で開拓は概ね落ち着いて、その後は目立った新ルートの開拓は無いのですが、それでも環境の良さ、幅広いグレードで素晴らしいルートが揃っている点などから、毎年各国からクライマーが集まる人気エリアとしての地位を不動のものにしています。とても良いエリアです。
≪メモ≫
・位置:43.493452,6.044401(←Googleマップで検索)
・近くの都市/アクセス:Aix-en-Provevce(エク・サン・プロヴァンス)から東に80km
・ルート高差:10〜40m
・ベストシーズン:11月〜5月。真冬は寒い。
・宿泊:Corrensにキャンプ場あり。近辺にホテル、ジトあり。
・トポ:Grimper en Provence Verte (by P.Bugada ed La Corditelle 2010)

5.Briancon(ブリアンソン)
日本にはなぜか「ブリアンソンの岩場」として紹介されましたが、一般的には「Haut val Durance(デュランス川上流の谷)の岩場」と呼ばれています。エクラン・アルプスの南東域に点在する岩場の総称です。
広大な谷に、標高・向き・岩質もさまざまなエリアがたくさん散在していて、そのため夏も含めた幅広い季節でクライミングを楽しむ事が出来ます。開拓はやはり1980年代後半から。エリアやルートはいまだに増えつつありますが、しかし近年の流行にはいささかそぐわず、外国人はあまり見かけません。ローカルな岩場です。
≪メモ≫
・位置(Briancon):44.90118,6.64278(←Googleマップで検索)
・ルート高差:10〜30m
・ベストシーズン:岩を選んで通年可能。
・宿泊:広大な谷にキャンプ場、ホテル、ジトが多数あり。
・トポ:Escalade en Brianconnais Haut Val Durance Queyras (by Y.,M. et J-J. Rolland ed Fournel 3eme ed 2012)

6.Ceuse(セユーズ)
標高2000mの丸テーブル状の山の南側が、幅3kmに渡ってすっぱりと前傾壁になっています。壁の上は北に向かってなだらかな下り斜面で、そこはスキー場です。よって、アプローチは2通り。ゲラン(Guerins)峠:標高1312mから歩いて取り付きへ(こちらが一般的)、エリアによりますが1時間〜1時間半。または、スキー場のリフトを使って壁の上へ、そこから下降する(一般的ではない)。
遥か遠くから顕著に見えるベルト状の巨大な前傾壁は、クライマーの心をいつも沸き立たせます。
開拓は1980年代から始まりましたが、高難度ルートが出揃うのは90年代後半。2001年7月にクリス・シャーマ(Chris Sharma)が、世界初の5.15aとなるRealization(9a+)(注2)を初登して大きな話題になりました。その後も、9a以上のルートの追加が進み、未登のラインもまだあり、今後も進化が予想される岩場です。
夏のヨーロッパはどこも暑くて高難度クライミングは厳しいのですが、セユーズは標高が高くて、夏は岩が日陰の時間が多いため、6月〜8月のベストシーズンには各国からのクライマーでとても賑わいます。登り1時間のアプローチは確かに大変ですが、セユーズでしか味わえない素晴らしい景観・クライミングがあり、一度は訪れる価値があるでしょう。
注2:フランス人はBiography(ビオグラフィ)と呼んでいます。
≪メモ≫
・位置:44.497148,5.938497(←Googleマップで検索)
・近くの都市/アクセス:Grenoble(グルノーブル)から南に100km
・ルート高差:20〜40m
・ベストシーズン:6月〜8月。
・宿泊:麓にキャンプ場が2件。
・トポ:Ceuse Ventavon Champsaur Valgaudemar Devoluy (by Rolland Marie ed 2004)

7.Verdon(ヴェルドン)
フランス南東部、カンジュエール(Canjuer)台地の北を深く侵食して素晴らしい景観のゴルジュが発達しています。フランス3大渓谷に数えられるヴェルドン渓谷です。谷幅200m〜2km、高差200〜600mの圧倒的な大ゴルジュが25kmに渡って続き、崖の上ふちは周遊道路と展望台が設置されていて、ヨーロッパ一(いち)と称される絶景目当てに非常に多くの観光客が訪れます。
この大岩壁を、懸垂下降して登る、もしくは上部のみをトップロープで登るのがヴェルドンでの古典的なクライミングパターン。ルートによっては展望台で観光客をかき分けて崖へ下降する事もあり、目立ちたがり屋には最高の(?)ヴェルドンならではのクライミングを楽しめます。
スポーツクライミングの展開はビュークスと同時期、1980年代に展望台周辺から川の右岸(rive droite)で進みましたが、90年代以降は左岸(rive gauche)で、他のエリアと同じように下からリードして登る前傾壁エリアが次々に開拓されて、クライマーで賑わっています。
≪メモ≫
・位置:43.760928,6.378937(←Googleマップで検索)
・近くの都市/アクセス:Aix-en-Provevce(エク・サン・プロヴァンス)から北東に100km
・ルート高差:20〜40m
・ベストシーズン:4月〜7月。エリアにもよる。
・宿泊:La Palud sur Verdonにキャンプ場が2件。ホテル、ジト多数あり。
・トポ:Escalade au Verdon (by P.Legier,F.Ristori ed Lei Lagramusas 2010)

8.Calanques(カランク)
マルセイユから東へ、およそ20kmにかけての海岸線は、白い断崖に挟まれた特徴的な入り江がくつもあり、エメラルドグリーンの海、真っ青な空とあいまったその素晴らしい景観からとても有名な観光・ハイキングの対象となっています。カランク(les Calanques)とは、本来、その入り江のことを指しているのですが、クライミングでカランクという時はもうすこし広義に、この地域に点在する岩場全体を総称しています。なので海岸から離れたエリアもあります。
エリアごとの立地により、真冬向きのシュジトン(Sugiton)周辺、春向きのレ・グード(les goudes)、グロット・ドゥ・ルー(Grotte de l'Ours)等など、さまざま楽しめますが、特にシュジトンのパロワ・デ・トワ(paroi des toits)はそのロケーションの良さ、風景の素晴らしさが申し分なしで、一度はお勧めのエリアです。
≪メモ≫
・位置(Sugiton):43.213722,5.454004(←Googleマップで検索)
・ルート高差:10〜35m
・ベストシーズン:11月〜4月、エリアによる。
・宿泊:近辺にはキャンプ場なし。Marseille(マルセイユ)にホテル多数あり。
・トポ:Calanques escalade (by J.-L.Fenouil et C.Tassan ed VTopo 2011)

9.Orgon(オルゴン)
開拓は1980年代から。細かいホールドのスラブ・フェースから始まり、徐々にブランクだった前傾壁へ、極めてビュークス的なスタイルで・・・チッピング・グルーイング・ホールド貼り付け等、何でもありで、人工的なムーブのハードルートが次々に作られていった。ある意味、極めてフランス的なエリアと言えるかもしれません。しかも新しいセクターの開拓は継続的に行われていて、いまだにルート数は増え続けています。
メインのセクター・カナル(le Canal)は、真ん前が広場で駐車場、アプローチ0分の好環境。ハードルートが並び立ち、中上級者向けの人気エリアです。しかし難点は、易しくて楽しいルートが少ない事。グレードも全般的に非常に辛いと定評。チッピング・グルーイングが多い点と併せて、ローカルクライマーにとっても賛否両論が極端に分かれるエリアです。
≪メモ≫
・位置(le Canal):43.777193,5.0495(←Googleマップで検索)
・近くの都市/アクセス:Aix-en-Provevce(エク・サン・プロヴァンス)から北西に50km
・ルート高差:10〜35m
・ベストシーズン:11月〜5月。カナルは真冬は寒い。
・宿泊:エリア内にキャンプ場あり。周辺にホテル、ジトあり。
・トポ:ESCALADE Les Alpilles (by J.Goussin ed FFMEcd13 2010)

10.St.-Leger-du-Ventoux(サン・レジェール・デュ・ヴァントゥー)
ツール・ド・フランス(自転車レース)の最大の難所として有名な、Ventoux(ヴァントゥー)山の北西麓に位置し、Toulourenc(トゥルランク)川沿いに大きな前傾壁やケイブが数km続いています。
開拓は1990年に入ってから。アプローチが便利な上流側から始まり、徐々に下流(谷の奥)に向かって進行し、現在でもエリアとルートが増え続けています。
この岩場の特徴は、何と言っても、8a(5.13a)以上の上級者向けルートが豊富なこと。とても数え切れないほどの8台のルートがひたすら並んでいます。ロケーションもさまざまで、日当たりと気候に応じて壁を選べるので、真夏以外のほとんどのシーズンで快適にクライミング出来ます。
まさしくパラダイスのようなクライミングエリアなのですが、しかし残念な欠点が2つ。岩質が若干脆いこととランナウトです。岩の脆(もろ)さはルートにもよりますし、注意して登れば問題ない程度なのですが、ランナウトはだいぶ強烈、。グランドフォールの心配がないルートの上部では、ムーブの難しさに関係なく5m位のランナウトは普通です。筆者のような小心者には辛いエリアです。
ルートスケールと前傾度に関しては申し分なしで、周辺のクラシックなエリアの人気が薄れていく中で、St.-Legerは時代のニーズにもマッチし、クライマーで賑わう大人気エリアとして進化を続けています。
≪メモ≫
・位置(駐車場):44.213035,5.255469(←Googleマップで検索)
・近くの都市/アクセス:Avignon(アヴィニヨン)から北東へ60km。車で1時間。
・ルート高差:15〜35m
・ベストシーズン:通年楽しめるが、真夏は暑い。
・宿泊:アプローチ入口にジト(ドミトリー)あり。近郊にキャンプ場多数。
・トポ:Escalades autour du Ventoux (by CDFFME84 ed 2008)

11.Tarn(タルン)
南フランスの中西部にはコース(Causse)と呼ばれる広大な石灰岩台地が広がっています。
その台地を深く浸食して、タルン渓谷やジョント渓谷、アヴァイヨン渓谷、ロト渓谷といったゴルジュが多数形成されていて、その多くがクライミングの対象になっています。なかでもタルンはフランス3大渓谷の1つにも数えられ、規模の大きさ、景観の素晴らしさからフランスを代表するクライミングエリアの1つとしてとても有名で人気が定着しています。
主な開拓は1990年代から。2000年に入る頃には主だったエリア・ルートが出揃いましたが、その後も少しずつ開拓は進んでいます。逆に、最初の頃に開拓されて時代のニーズに合わない垂直系エリアは、訪れるクライマーも少なく忘れられつつあります。トポが古くて停滞感が少しありましたが、2012年8月にようやく新しいトポが刊行されて、またブームが再来するかもしれません。
≪メモ≫
・位置(le navire):44.309286,3.247501(←Googleマップで検索)
・近くの都市/アクセス:Montpellier(モンペリエ)から北へ150km
・ルート高差:15〜40m
・ベストシーズン:11月〜6月。真冬は寒くて辛い。
・宿泊:渓谷にキャンプ場が多数あり。
・トポ:Les Gorges du Tarn (by CAF Causses et cevennes ed 2012)



■実用情報■          
フランスは日本よりだいぶ緯度が高く、南部のマルセイユ(43.29)でも札幌(43.05)より少し高緯度です。さらにサマータイムが導入されていることもあり、夏は日がすごく長く、冬は逆にすごく短くて、冬至に近い時期の訪問はお勧め出来ません。
真冬は寒くて、やっと気温が上がり始めてアップしても、体が動くようになった頃にはもう夕方・・・まるで追い立てられるようなクライミングになります。また、10月〜11月は雨季で天気があまり安定せず、やはりお勧め出来ません。
反して夏至に近い時期は、22時頃まで明るくてとても快適です。6月頃は、北向きの壁にも朝日と夕日が当り、逆に、南向きの前傾壁は一日中ほぼ日陰でコンディションが良かったりします。
そのようなわけで、ベストなシーズンは2月〜7月。カランクなどの日向がメインの岩場で1月〜3月。内陸のビュークス、タルン、シャトーベールなどは3月〜6月。標高が高いセユーズは6月〜8月という感じでしょうか。
≪宿泊≫
1.キャンプ場
クライマーには最も一般的で安上がりです。お湯が出るシャワーと水洗トイレ・洗面所が完備されていて、日本のキャンプ場のイメージとは大違いでとても快適です。バンガローやモービルハウスがあるキャンプ場も多くて、空いていればテントなしでもOK。但し、バンガローやモービルハウスは快適ですが値段も高めで、後述のジト(Gite)並のこともあります。たいていのキャンプ場は通年営業ではないので、営業期間に注意が必要です。近年はネット上で施設の確認やバンガローの予約がたいてい出来るので、事前に確認すると良いでしょう。
2.ジト(Gite)
ジト(Gite)とは、ツーリスト向けの宿泊施設・アパートのことですが、プール付きの豪華な貸し別荘から1DK程度のものまでいろいろです。ナベ・食器から一通りの生活用具が備え付けで、体一つで入ってもすぐ生活できるのがポイントです。自炊できるし門限もないしクライマー的には最高ですが、料金は高くてホテル並みです。1週間単位で借りるのが通例ですが、空いていれば週末だけでもOKのことが多いです。以前は、町のツーリスト・インフォメーション・センターで斡旋してもらうことが殆どでしたが、近年はネット上で調べてメール予約できるジトが増えています。
3.ホテル(Hotel)、オーベルジュ(Auberge)、シャンブル・ドト(Chambre d'Hote)
数日程度の泊まりならばやっぱりホテルが便利。シャンブル・ドトは民宿と訳されることが多い。オーベルジュは本来レストランがメインで、泊まりも出来る・・・って感じなのですが、この3つの区分けはあまり明確ではないです。
近年、ネット予約が普及したおかげで、観光地のホテルは予約がないと宿泊困難になっているので要注意です。とくに帰国前のホテルは日本出発前に予約してしまったほうがよいかもしれません。
≪移動≫
車は絶対に必要です。車がないと何も出来ません。1ヶ月程度までならレンタカー、もっと長期なら新車リースをお勧めします。レンタカーはネットで最安値を探して予約も出来る時代ですが、面倒ならH.I.S.などの旅行代理店でも斡旋してもらえます。新車リースは消費税(TVA)が高いフランスならではのシステム。契約期間が長いほどレンタカーより割安になりますが、何より新車なのとトラブル発生時の態勢が安心です。日本の代理店はルノーを扱うフランストラベルセンターと、プジョーを扱うプジョー・シトロエン・ジャポンの2社のみ、前者は「ユーロドライブ」、後者は「オープンヨーロッパ」の名前で展開しています。
車のギアは基本、マニュアルです。オートマチックは非常に少なくて、レンタルの際にも高めの値段になりますし、『オートマチックで予約して受け取ったらマニュアルだった』なんてトラブルも実際にあります。可能な限り、事前にマニュアルに慣れておいた方がベターです。
≪交通ルール≫
もちろん右側通行です。一般道の制限速度は90km/h。政府が交通事故対策を積極的に打ち出した結果、この10年ぐらいでフランス人の運転はだいぶ大人しくなりましたが、それでも日本よりだいぶ激しいのでご注意を。周囲に合わせる必要はありません。遅い車は勝手に抜いていくので、慣れるまでは慎重に運転してください。
交通ルール全般については、ネット上に解説ページが多数ありますので事前によく調べて憶えてください。とくに交差点(ロータリー)の進入ルールが独特です。現場で慌てないように・・・。
走行中は、スピードマナーさえ気をつければ、あとはアバウトでたいてい大丈夫ですが、街に進入する時の減速は鉄則です。制限速度の看板が70km/h、50km/hと段階的に出て、警官がスピードガンを構えて頻繁に取締まりをしています(特に日曜日)。また、大きな段差が作られていて減速しないと車が壊れることもあります。郊外ではオービスもよく見かけ、大きな告知看板が必ずあるので見逃さなければ大丈夫ですが、その数は年々確実に増えています。昔からのシートベルト取締まりに加え、近年はスピード取締まりが目立つのでご注意ください。
≪電話・ネット≫
国際ローミング対応の携帯電話が絶対的に便利です。公衆電話はめったに見かけませんし、あっても壊れていることが多い。かつてヨーロッパで国際ローミングと言えばVodafone(ボーダフォン・現Softbankモバイル)の独壇場でしたが、最近はAUNTTdocomoも便利になっています。ただし、GSMに対応した3G携帯でないと大都市以外では圏外になってしまうので、設定も含めて事前に必ずご確認ください。GSM対応携帯なら、そのまま現地でも日本と全く同じようにメール・電話・インターネットが出来ます。ビックリするような場所でも通信できます。しかし、通信料は日本でのパック料金外になるので、考えずに使いまくると請求を見てビックリすることになるので要注意です。
スマートフォンは待機中もパケットの送受信を行うため、基本的にパケホーダイが前提の通信機器です。例えば、2012年1月時点でのSoftBankの「海外パケットし放題」の料金は、1,980円/1日〜2,980円/1日。数日間の海外旅行なら非常に便利ですが、長期間の海外使用には全く向いていません。設定で回避するか(ミスしたら大変)、通信時以外は電源を切るか(結局不便)・・・。
空港など公共の場所には公衆無線LAN(有料)あり。近年はほとんどのキャンプ場に無線LANスポットが設置されていて、ネット接続は年々便利になりつつあります。
≪クライミング用具・キャンプ用品≫
60m以上のロープが必須(お勧めは70m以上)です。ロープについては、現地で容易に安く購入出来ますが、念のため最低限の用具一式は日本から持参したほうが無難です。
大きな都市には大抵クライミングショップがありますが、品揃えはあまり良くありません。特にクライミングシューズは、お気に入りの靴・サイズに出会える事がまずありえないので、日本から持参する事をお勧めします。
デカトロン(Decathlon)(注3)は便利。クライミングギアも豊富に売っていますが、特にテントなどのキャンプ用品は安くて良質です。滞在期間によっては、最初に買って、帰りに捨てるのも一手です。Decathlonのホームページで目的地周辺の店舗や品揃えのチェックが出来ます。
注3:Decathlonは郊外型の大型総合スポーツショップでヨーロッパ中の各都市に展開しています。



■用語解説■          
クライミング用語・フランス語編です。フランス語辞書を探ってもたぶん出てこないだろうと思われる用語や分かり難い用語を厳選して、解説を交えて説明してみました。
昔は『フランス人は英語を話さない』なんて言われていましたが、いまはそんなことはあまり無いです。ましてやクライマーはみんな陽気。英語でだいたいOKですが、でもローカルな岩場に行くとシャイな人たちもいます。そんなときは、こんな言葉を理解していたら、ローカル達ときっと仲良しになれるでしょう。
≪岩場について≫
フランスのfalaiseは、ほとんどがcalcaire。ツルツルに光った硬い大理石のようなcalcaireから、砂の比率が多い柔らかめのcalcaireまで様々なタイプがあります。アルプスやピレネーの高峰にはgranitがあり、アルザス地方からドイツ南部にかけてはgresが多いですが、フランス南部の人気エリアは全てcalcaireです。
falaise (ファレーズ:女性名詞):岩場.
calcaire (カルケール:男性名詞):石灰岩
granit (グラニト:男性名詞):花崗岩
gres (グレ:男性名詞):砂岩

≪ルートについて≫
クライミングルートはフランスでは「ルート」ではなくてvoieと呼びます。
グレードはcotation。アメリカ・日本で使われているデシマルグレードではなくて、フレンチグレードと呼ばれる独自のシステムで表記されます。フレンチグレードは、フランス以外にもスペイン、イタリア、オーストリアほか、ドイツとイギリスを除くほとんどのヨーロッパ諸国で採用されています。
トポには時々、ルート(voie)ごとに使用ボルトの記載があり、goujonbroche(まれにscellement)と表記されています。ハンガー式の拡張ボルト(=goujon)か、丸リングのケミカルアンカー(=broche)かは、ギリギリのルートをトライするクライマーには大きな関心事。なんと言ってもケミカルアンカーは信頼性が抜群、敗退時もロープをリングに直接通して(結び替えて)下降出来るので、残置カラビナが不要です。拡張ボルトのハンガー式ではそうはいきません。brocheと表記があれば、実力以上のルートに背伸びして取り付いても敗退が容易な事を意味します。
brocheとは文字通りで語源はブローチです。胸飾りのブローチはもともとは串状の先端がリングで、飾りが付いていて・・・かんざしのイメージ?なのですが、もうお分かりですよね、岩に突き刺さっている大きなブローチ、ヌンチャクを飾るイメージです。
尚、リングボルトと言うと、日本ではRCCボルトと並ぶ前時代の極めて怪しい手打ちボルトを意味しますが、フランスでは全く逆、brocheのことを意味しますので、注意が必要です。
voie (ヴォワ:女性名詞):ルート
cotation (コータシオン:女性名詞):グレード
broche (ブローシュ:女性名詞):リングボルト。ケミカルアンカーのピンそのもの。
goujon (グジョン:男性名詞):拡張ボルト
scellement (シェルマン:男性名詞):ケミカルアンカー
spit (スピット:男性名詞):ボルトにつけるハンガーのこと
plaquette (プラケット:女性名詞):ボルトにつけるハンガーのこと

≪クライミングギア≫
ロープはcordeで分かりやすいですが、ハーネスのbaudrier、カラビナのmousquetonはだいぶ馴染みにくい単語ですね。ヌンチャク(クイックドロー)のdegaineは、元々は刀の鞘(さや)を意味しますが、フランス人にはそんな風に見えるのでしょうか? 日本語の「ヌンチャク」は、どの外国人に説明しても「なるほど」の反応で、私個人的には見事な表現だと思うのですが、日本以外には普及しないですね・・・。
corde (コード:女性名詞):ロープ
baudrier (ボドリエ:男性名詞):ハーネス
mousqueton (ムスケトン:男性名詞):カラビナ
degaine (デゲン:女性名詞):ヌンチャク、クイックドロー
sangle (サングル:女性名詞):スリング
sac a magnesie (サック・ア・マグネジー:男性名詞):チョークバッグ

≪クライミング≫
en teteは「先頭で」を意味しますが、リードで登るときにもen teteを使います。トップロープはmoulinette。登り終わって下降するときは、次のクライマーのために掃除がエチケットです。登っているクライマーに掃除をお願いするときは、Nettoyez les prises, s'il vous plait.(ネトワイエ・レ・プリーズ・シル・ブ・プレ)。
余談ですが、フランスの南西部、ロト(Lot)地方のクライマーは「真のオンサイト」にこだわっています。ホールド・ムーブを探しながらオンサイトする楽しみをとても大切にする彼らにとって、マーキングやチョーク跡を見つけてしまうのは興ざめであり、オンサイトの価値が失われることを意味します。ロト地方では、登り終わったクライマーの義務は、しっかりブラッシングをして自分がつけたチョーク跡を可能な限り消すことであって、マーキングを残すなんて以ての外です。地域によってはそんなローカルマナーもありますのでご注意を・・・。
grimper en tete (グランペ・オン・テト):リードで登る
moulinette (ムリネット:女性名詞):トップロープ
nettoyer (ネトワイエ:動詞):掃除する
prise (プリーズ:女性名詞):ホールド
a-vue (ア・ヴュー):初見
grimper a vue (グランペ・ア・ヴュー) :オンサイトで登る
faire un a vue (フェール・アン・ア・ヴュー) :オンサイトする
apres-travail (アプレ・トラヴァイユ):レッドポイント
mousquetonner (ムスケトネー:動詞):クリップする
clipper (クリッペー:動詞):クリップする
assurage (アシュラージュ:男性名詞):ビレイ
noeud d'arret (ヌー・ダレ:男性名詞):結びの末端処理
noeud de bouline (ヌー・ド・ブーリン:男性名詞):ブーリン結び
noeud de chaise (ヌー・ド・シェーズ:男性名詞):ブーリン結び
noeud en huit (ヌー・ダン・ユイット:男性名詞):8の字結び

≪ムーブについて≫
yaniroの由来は、アメリカ人クライマーのトニー・ヤニロです。若いクライマーはもう知らないですよね。往年の名クライマーですが、昔、Buoux(ビュークス)の有名ルートChouca(8a+)で、第一核心のランジの部分をフィギュア4で解決して話題になりました。ムーブを発見したのはじつはヤニロではなくて、他のアメリカ人だったのですが、有名クライマーのヤニロがムーブをフランス人に見せたので、それ以後、「ヤニロがやっていたムーブ」= yaniroで定着しました。人名がムーブ名になった珍しいパターンです。英語圏では「ガストン」が人名由来ですが、これは、かのガストン・レビュファが多用したので付いた名前。でもフランス語ではepaule(肩)と呼ばれます。
キョン(ドロップニー)はフランス語ではlolottelolotteは本来、女の子の愛称(CharlotteLolotte)だと思うのですが、なぜlolotteになったのか由来は私も知りません。フランス人に聞いてみようと思うのですが、つい忘れてしまって・・・。
面白いのはパーミングでadherence、発音は「アデランス」です。カツラや増毛ではないですよ。「ペタシ(密着)」の意味です。某育毛メーカーの名前の由来もここから来ているそうです。密着の意味なのでスメアリングにも使いますし、体を壁に密着させるムーブのときにもadherenceで表現します。
yaniro (ヤニロ:男性名詞):フィギュア4
epaule (エポール:女性名詞):ガストン
lolotte (ロロット:女性名詞):ドロップニー、エジプシャン、キョン
adherence de mains (アデランス・ド・マン):パーミング
adherence de pied (アデランス・ド・ピエ):スメアリング
pince (パンス:女性名詞):ピンチグリップ
arquee (アーケ:女性名詞):アーケ、カチ握り
en tendu (アン・タンデュ):タンデュ持ち
inversee (アンヴェルセ:女性名詞):アンダークリング



■スペイン・カタルーニャのクライミング■          
近年、スポーツクライミングで非常にホットな話題を振りまいている地域がスペイン・カタルーニャです。
とくにLleida(リェイダ)を中心にした地域・・・南側のモンサン国定公園と、北側の台地を穿つノゲラ川・セグレ川沿いに発達した渓谷には、とても素晴らしいクライミングエリアがいくつもあります。
そして、スペインはフレンチスタイルの影響を最も早くから受けた国であり、プロテクションは非常に良く、抜群のスケールの前傾壁や大ケイブのエリアに無数の高難度ルートが拓かれています。裾野も広く、5.10台の易しいグレードでも素晴らしい内容のルートが多くて、初心者からトップクライマーまでとても充実したクライミングを楽しむ事ができます。
そのような現代的なニーズに完全にマッチして、カタルーニャはこの数年、ヨーロッパで最も人気がある地域へと成長しています。難点は、ノゲラ川流域のまとまった情報が手に入り難かったことですが、2010年に『LLEIDA CLIMBS』とタイトルされたトポがようやく刊行されて、良質な情報が出揃い、より身近になりました。(by P.O'Donovan, D.Andrada)
以下に、最近の人気エリアで代表的なのものを、ごく簡単にご紹介します。

≪Siurana(シウラナ)≫
スペインではとてもクラシックなフリークライミングの岩場ですが、いまだ進行中で人気は衰えません。有名なBroadway(8c+)やLa Rambla(9a+)などがある「El Pati」エリア周辺に新ルートが増え、さらに北に向かってエリアが拡大中です。晩秋〜春のエリアです。
※位置(EI Pati):41.265187,0.937089(←Googleマップで検索)
≪Montsant(モンサン)≫
垂直〜やや前傾のポケット主体の岩場です。礫岩。開拓は概ね終了か? 眺めが良くて素晴らしいロケーションですが、南向きで日当たりが良いので、冬〜早春以外はちょっとつらい。
※位置:41.272049,0.833609(←Googleマップで検索)
≪Margalef(マルガレフ)≫
いま、おそらくヨーロッパで一番ホットな岩場。礫(レキ)岩、ポケットホールドが多い。二つの谷に沿ってエリアが沢山並んでいて、スラブからルーフまで壁の傾斜は色々。壁の向きやスケールも色々で、初級者向けグレードから9台(5.14+以上)まで良質なルートがとても豊富に揃っています。春のバカンス時期には世界中からクライマーが集まって大賑わい、谷じゅうが熱気に包まれます。秋から春、気温と日当たりに応じて壁を選んで登れます。
※位置(Finestra):41.275416,0.767954(←Googleマップで検索)
≪Santa Ana(サンタ・アナ)≫
カタルーニャの州境をホンの少し越えて、正確にはアラゴン州の岩場なのですが、最寄のLleida(リェイダ)から30km程度の距離なので、カタルーニャの岩場と一緒に紹介されます。サンタ・アナ貯水池のダム手前にあり、色々な向きのいくつかのエリアに分かれています。川沿い東向きのエリアは、トポでは「夏でも大丈夫」と書かれているが、真夏はやはり厳しい。シーズンは秋から春、気温と日当たりに応じて壁を選んで登ります。
※位置(Al Cielo):41.876689,0.578166(←Googleマップで検索)
≪Tartareu(タルタレウ)≫
5.10〜5.12がメインの岩場。難しいルートは無いが、易しい良い前傾ルートが豊富に揃っているので、初級〜中級クライマーに人気です。東向きで一日中ほとんど日陰。でも夏はやっぱり暑くて、ベストシーズンは真冬を除いた秋〜春です。
※位置(Jetlag):41.930814,0.710866(←Googleマップで検索)
≪Santa Linya (サンタ・リーニャ)≫
とても有名な大ケイブ。日本のクライミング雑誌にも何度か紹介されて日本人もよく訪れていますが、メインの大ケイブ(Cova Gran)は8台(5.13)以上ばかり、上級クライマー以外には厳しいエリアですね。シーズンは秋〜早春、真冬がベストシーズンです。
※位置(Cova Gran):41.925961,0.811779(←Googleマップで検索)
≪Bruixes(ブルーシャス)≫
日本にはテラデッツ(Terradets)と紹介されましたが、Terradetsは渓谷の名前です。渓谷内に色々な岩場が散在していて、その中で最も人気があるエリアがBruixes(ブルーシャス)。スケールのある素晴らしい前傾壁ですが、南西向きなので、冬〜早春に限定のエリアです。
※位置:42.045341,0.898261(←Googleマップで検索)
≪Collegat(コリェガ)≫
コリェガ(Collegat)はエリア名ではなくて渓谷の名前です。コリェガ渓谷に大小色々の面白いエリアが散在しています。代表的なのはCine(シネ)、Pedrera(ペドレラ)、Costoia(コストイァ)など。エリアによりロケーションがかなり違い、夏以外はどこかのエリアでクライミング出来ます。
※位置(Pedrera):42.280817,1.037886(←Googleマップで検索)
≪Oliana(オリアナ)≫
アンドラ街道を北上中、Olianaの街から左手に見える大きな岩山の前衛壁です。遠目にも素晴らしく美しい、すっぱり切れた前傾壁ですが、8台(5.13)以上ばかりなので上級者向け。南東向きで、シーズンは冬、もしくは春の夕方です。
※位置(Contrafort de Rumbau):42.077768,1.287825(←Googleマップで検索)
≪Tres Ponts(トレス・ポンス)≫
アンドラの40km手前、旧ローマ街道の名残の橋が名前の由来です(Tres Ponts=3つの橋)。素晴らしいスケールの前傾壁で、初級者向けのルートから8b+(5.14a)まで豊富に揃っています。東向きの壁で、狭い渓谷のため風がいつも吹いて冬は寒い。「夏もOK」とトポには出ているが、お勧めは4月〜5月。
※位置:42.253075,1.347043(←Googleマップで検索)



■おわりに■          
ここまでざっくりとフランス・フリークライミングのご案内をしましたが、いかがでしょうか?
エリア紹介は時間と紙面の都合により、特に有名な11エリアに絞りましたが、もちろんこれら以外にも楽しく美しいエリアが無数にあります。しかも日本と違い、上級者向けルートばかりではなくて、5.10台や5.11台の美しいルートがたくさん豊富に揃っています。ヨーロッパツアーはクライミング上級者が行うものと誤解されがちですが、じつはそんな事は全くなくて、逆に初級者・中級者ほど楽しめるのではないでしょうか?
また、岩から目を離して周りを見回すと、フランスには歴史や文化を感じさせる建造物が溢れています。何世紀も続く街並み、カテドラル(大聖堂)、礼拝堂、お城や要塞・・・。特に南フランスにはローマ時代の遺跡が数多く残っています。クライミングの合間に、そんな建造物を見て歩くのもきっと楽しいことでしょう。
そして、フランスは美食の国。予算と体重さえ許せば、食べ歩きも大きな楽しみの一つです。レストランでの食事や、パン屋で買うパンの美味しさは定評ですが、スーパーで何気なく買う缶詰や瓶詰めですら驚きの美味しさだったりします。(体重増加にはご注意を・・・。)

こんな楽しい事ばかりのフランス・フリークライミング。
片道12時間のフライトは辛いですが、その先での思い出はきっと素晴らしいものになるでしょう。

さあ、出かけましょう! Bon voyage !  Bonne escalade !

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